いまもし誰かが自分に1本の煙草とマッチの火を分け与えてくれて、煙草に火がうつるあいだ、吹く風にか細くゆらぐ炎を両手のひらでじっと守ってくれるような誰かがいたなら、そのままそいつと一緒にどこかへ行ってしまうかも知れない、そういう幻想が男の胸のなかにはある。