新幹線に乗って富士へ行く。生憎の雨で富士山は見えず。どうなっておるのか。
富士に来たのに富士山が見えないという事態は、アマゾンに来たのに生憎ジャングルは
切らしておりましてとか、エジプトに来て只今ミイラは棺の中で眠っておりますとか、
ネス湖に来て熱心な絶滅危惧種保護団体の陳情書に強引にサインさせられたり、
銀河鉄道999に乗って発車したあとメーテルからの伝言を渡されたり、
そういう状況に遭うのと同じくらい、がっかりだ!

工場の白煙と無駄に明るい雨雲の中に偉大な富士の存在のみを感じつつ、
傘をさして広い工場のなかをうろうろうろし、びしょ濡れの靴紐を結びなおして
ずぶ濡れのスーツの襟をただしつつ会議に出席し、せっかくだからと同行した方々と
お酒を飲んでからまた新幹線で帰ってくる。富士山は帰りのときも隠れていた。
いったいどうなっておるのか。

帰りの新幹線が新横浜に停車している間に大きめの地震があった。
それでも新幹線は平気で定刻に次の品川駅についた。たいした自信である。

自宅までの列車中で 『ローマ人の物語』 の第20巻を読み終える。
疲れていたので、ときどき 「寝ろ」 に聞こえたりしていたが、皇帝ネロが
これまで想像していたような暴君ではないことが判ったのは収穫だった。