早起きをしたが、夕方まで部屋の中でバタイユの 『眼球譚』 を読んだり、
ブーシエの 『ディアナの水浴』 の複写を眺めたり、大長編ドラえもん
シリーズの 『のび太のパラレル西遊記』 のDVDを観たりして過ごした。

日が傾きかけた頃に少しだけ眠った。
夢の中でオレさまは中国皇帝の側室の一人だった。華やかな後宮のベランダで、
言葉の通じない給仕を従え、黄砂に霞む城壁を眺めながら気まぐれな征服者の来訪
を待っていた。そのうちに医師達が現れ、衣冠を正して、おめでとうございます、
と言って深く頭を下げた。はて、正月までにはまだ3ヶ月もあるのにと思った。

目が覚めたら西日が射していた。
長くのびた影を引きずりながら散歩に出かける。

強い陽射しに冷たい風、こんな気候には慣れていないせいか、金色に輝く街の中を
無能な雄ライオンのようにスタスタ歩いていくと、目に映る女性がすべてギリシャ
のビーナスに、すべての男性がローマの元老院議員に見えてしまう。

駅前の売店東スポを買い、本屋を一回りしたのち、日暮れを待ってから帰途につく。
鏡のような満月が、いまにも戦争を仕掛けそうな激しさで地上の夜を見下ろしていた。