7時頃に妻に起こされ、対話しながら洗濯物を干す。寝ぼけているので、
妻の話もよく聴きとれないし、シャツ1枚干すのに5分くらいかかる。

朝食後、ガス屋がくる。給湯器の点火装置を診にきてくれたのである。
悪戦苦闘の努力の末、追い炊きはできるようになったがシャワー系統が
いまだに不可。故障した部位は明確になったが、後日に部品を手配してから
再調整することになりそうだ。肩を落としながら帰っていくガス屋を見送る。
妻も失意を抱えて家を出て行ってしまった。

それから庭の雑草を引き、和室を片づけ、堅く絞った雑巾で畳を拭く。
ひととおりの作業を終えたところで、風呂に入って汗を流す。髪を乾かし、
服を着替えて、日光で買った 『輪王寺』 のお線香を出して火をつける。
そうして足を組み、深呼吸をして坐禅に入る。

紫色のけむりが音のない奔流となって、止め処なく空間に流れ出すのを
じいいいいいと見つめる。見つめすぎてはいけない。虚心で観るのだ。
こおろぎが話しかけてくる。キリギリスも現れた。同時通訳してくれる
のは有難いけれど、生憎こおろぎ語もキリギリス語もわかりません。
けれども確かにキミ達の声は届いている。だから今日はキミ達に、陽気で
移り気なキリギリスと愚直な兵隊アリの悲しい物語を聞かせてあげよう。

15分程度で足が痺れてきたので坐禅は終了。輪王寺はまだ4割ほど残っ
ている。消してしまうのも惜しい気がしたので、しばらく紫煙を眺めて
いたら、やがて眠くなってきて、そのまま横になって30分ほど眠る。

目が覚めて頭がスッキリしたところで、図書館と貸し本屋へ行って帰っ
てきたら、妻も戻ってきていたので、久しぶりに外で飲むことにする。

馴染みの居酒屋。二人で『百合』と『侍士の門』をロックでやる。
店長が新しい銘柄が入ったといって『杜氏潤平』を教えてくれた。
ちょっと鋭い舌触りだが、店長が薦めるだけのことはあった。