アドマイヤキッスの未勝利戦には興味ないし、新潟2歳ステークスとか、
小倉2歳ステークスとか、ぜんぜん興味ないし、さてどうやって今日を過ごそう
かと、暫らく庭の雑草引きなどしながら思案していたが、一息いれて牛乳など
飲みながらメールのチェックをしてみたら、出版社に転職したK藤女史からメール
が届いていた。丸善で絵本の復刊フェアをやっているらしい。

そういうわけで庭掃除を放り投げ、大急ぎで妻に身支度をさせて家を出る。
丸善に着いたのは午後2時過ぎだった。確かに某社の絵本が沢山並べられている。
当初は、エロール・ル・カインの挿絵のついた絵本を持って帰るつもりだったのだが、
すべてに目を通してから、プロベンセン夫妻の 『わたしのかわいいめんどり』 を胸に
抱いてレジへ並ぶ。ひよこのネヴィが可愛かったこともあるが、

 ”ネヴィのとしは,みっかです”

という一文にシビれた。

さらに適当に立ち読みした後、なぜか丸ビルへも行ってみたりして、なぜか地下の
スターバックスでコーヒーを飲んだ後、なぜか東京中央郵便局にハガキを1枚投函して、
そそくさと帰ってくる。

夜は大雨が降った。
部屋を暗くして窓を開け、稲光が何度も瞬くのを夫婦で眺めた。今年は花火にも連れて
行ってやらなかったからな。激しい雷雨だった。まるで、巨人がシャワーを浴びながら
溶接工事をしているかのようだった。

しばらく観察していたが、いっこうに雨が止む気配がないことに飽きてきて、
再び電気を点けて昼間に買った絵本など眺めていたら、ふいに電灯が消えた。
妻に窓を開けさせて、隣近所の様子をうかがってみると、どうやら世界中の灯りが
消えてしまっているらしい。停電だった。

こんなときに妻がトイレに行きたいと言い出した。
深呼吸をして10数えてから、しぶしぶトイレまで誘導してやり、妻がトイレから
出てきたら電気が回復した。停電の起きていたわずかな時間を、闇黒のトイレの中
で過ごさねばならなかった彼女は、もはや負け惜しみを言う元気もなくして、
さっさとベッドにもぐりこんでしまった。