目が覚めたら9時を回っていた。
まだ頭痛がするし、身体がだるいし、関節がピリピリする。
休もうか、どうしようか迷って、とりあえず午前中は休むということで会社に連絡する。
電話した後も、休もうか、どうしようか迷ったまま、ベッドに横たわっていた。
休もうか、どうしようか、休もうか、どうしようか……。

目が覚めたら10時を少し回っていた。
まだ頭痛がするし、身体がだるいし、関節がピリピリするが、もう寝ている事に飽きたので、
ボチボチ寝床から抜け出して、シャワーを浴びたり、バナナを食べたりする。
妻は今朝も早くからパートに出ている。
苦労をかけるなあ、とか思いながら、バナナをもう1本食べたりする。

先日、『草枕』 を読んでいたら羊羹の話が出てきて、どこかで同じ文章を読んだことがあると思い、
硝子戸の中』 だったか、他の作家の本の中だったか、ずっと思い出せないでいたのだが、
ふいに今朝、それが谷崎の 『陰翳礼賛』 の中だったことに気がついた。
羊羹をめぐる冒険。
それにしても漱石というのは諧謔に満ちた人だと思う。根っからの俳人なのだ。

午後から出社。まだフラフラする。出社してすぐに 「帰ろう」 とさえ思う。
けれども客先で会議があるので、頑張ってJR総武線に乗って移動する。
会議中にも、ぼーっとしていることを見抜かれてはいけないので、
時々、意見を述べたりするように心がけていたのだが、いったい何を喋っていたのか、
あまりよく覚えていない。

帰社後、早めに雑事を済ませて、日が暮れる前に退社。
街へ出てみると、アスファルトが少し濡れている。夕立があったようだ。
雨に潤った世界は、夕陽に照らされて、せつないほどに美しく輝いていた。

帰宅後も、まだ頭痛が酷いのに、酒を飲むことを妻に禁じられるのを恐れて、
さも快癒したかのごとく、ことさら強気にチェッカーズなど歌いながら着替えていたら、
たちまち風呂の掃除を命じられてしまった。よりによって風呂の掃除である。
喜んで引き受ける。流れる汗と涙をシャワーでごまかしながら。

労働の後はビールである。これは石器時代から決まっていることだ。
夕食に合わせて、さっそく冷蔵庫に手をかけると、やっぱり妻に咎められた。
病人が酒を飲むのかと。うぬぬぬ。病人だと知って風呂掃除をさせやがったのか。
鬼だ、プーさんの靴下をはいた鬼がここにいる!

もちろん病人ではないから飲みますよ、と言って飲めば良かったのに、
そのことに気づかず、ビールをあきらめて、ウーロン茶をがぶがぶ飲む。
すると不思議なことに、次第に頭痛がおさまってきた。

今夜は、ねこぢるのマンガを読んで寝ることにする。
風邪を引いたときには、ねこぢるのマンガを読むのが一番だ。
映画 『血と骨』 が物足りなく感じられたのは、たぶん、ねこぢるのマンガを
読んでいるせいだと思われる。