何度も浮かんでくる昨日の悪夢を、頭から消し去るのに必死だった。

職場には、ミニPOGでディープインパクトを指名しているY成君がいる。
努めて目を合わすまいとしても、彼の視線はどこまでもどこまでも追ってくる。
そのうちにオレさまの席までやってきて、頼みもしないのにローゼンクロイツと、
エイシンヴァイデンのハズレ単勝馬券をくれた。現地購入の逸品である。
こんなもの、と投げ捨てようと振り上げた手を下ろして、ありがたく頂戴する。
引出しの中には、去年のメテオバーストブラックタイドの馬券がしまってある。

罪のない人々からは 「皐月賞どうでしたか」 と聞かれたりするのだが、
もちろんうまく答えられない。職場の上司が馬連を当てたと喜んでいるので、
心からお祝いを申し上げてみるが、すでに馬券への興味など失いかけてさえいる。

ひととおり洗礼を受け終わったところで、メールを確認してみたら、
オケラオーから喜びのメールが届いていた。なにしろ、自分の指名馬が皐月賞
ワン・ツーを決めたのだから、嬉しくないわけがない。でも馬券は獲れなかった、
と言って恥ずかしそうにしてはいたが、やっぱり羨ましいことに変わりはない。

個人オーナーが2年続けてダービーを獲ることは有り得ないだろうという想像から、
ディープインパクト皐月賞が大目標だなどという理屈をこねていたが、
あんなレースを見せられてしまうと、ダービーもあっさり獲られてしまいそうな
気がしてくる。

とにかく過ぎたことは忘れよう、未来への不安も忘れようと努めながら、
暗い道をとぼとぼ帰ってくる。首痛い。