朝のうちは手塚治虫の『一輝まんだら』を読む。何度読んでも思うが、これが未完なのはとても残念なことだ。シューベルトの未完成交響曲よりも残念なことだし、ウゴウゴルーガみかん星人よりも残念なことだ。気をとりなおしてギターなど爪弾きながら『G線上のアリア』の譜面にコードを書き込んだりいていたのだが、そのうちビオラのパートに付記されているハ音記号の形が気になってきて、猫の鳴き声を記述するときに使うニャオン記号のデザインを考えてみたりする。ララァのテレパシー用にジオン記号も必要だな。そのかたわらで、クリーニングに出して戻ってきたばかりのコートの袖が汚れているのに気付いた妻が、クリーニング屋に厳重注意を促しに行く、と息巻いて立ちあがったとき、突然、空が暗くなり、風が吹き荒れ、雨が強く降り始めた。奥様は魔女か。お前様も付いてくるかと訊かれたが、この荒天が落ち着くまでは家を出ないつもりである。妻はひとりで出かけていったが、やがてケータイに電話がかかってきた。クリーニング屋さんと和解したらしい。気がつけば窓外には青空が広がり明るい陽が射している。うーむ。とにかくスーパーマーケットまで荷物を取りにくるようにと指示を受けたので大急ぎで出かける。
夜はスパゲティ。とても美味しく頂けたことなど伝える。今夜の『トンイ』も、トンイの困った顔のアップで終わった。どうやらこの点だけは他の役者には譲れないらしい。