風が吹いてこないうちにと、午前中のうちにジョギングしていたら、登り坂の斜面で小さな子供たちが、「あ、オジサンだ」 「あ、オジサンだ」と、知らないオジサンなのに後からついてくるので、息も絶え絶えに 「あぶないよ」 「あぶないよ」 と平仮名で注意を呼びかけつつ、ようやく坂の上で振り切ったと思ったら、離れゆく後方から 「オジサーン」 と最後に呼びかけてきたので、”杉作ーっ” と心の中で叫びながら手を振ってやる。

午後。ご近所研究家の妻の勧めで、手を引かれつつ、すぐ近所なのに何故かまだ立ち寄ってみたことのなかった図書館に立ち入ってみる。建物はとても古く、敷地面積が狭く、もちろん書架も少なく、本の並びも整然としておらず、ソファーもフニャフニャ。なのに、いや ”それ故に” なのか、とても落ち着く。司書の人々の会話も落ち着いている。子供も沢山いるがみな大人しい。昔ながらのトイレもつくりは小さいが、掃除が行き届いてとても清潔感がある。老朽している施設だけれども ”旧き良き” とつい形容してしまいたくなる空間がここにある。図書館の隣は児童遊園地になっていて、さきほどから少年少女が自転車のベルで遊んでいるのが壁越しに聞こえてくる。各自転車のわずかな音色の違いを聞き比べつつメロディー演奏に挑戦している。ベルの合い間に、子供達は笑い声だけで会話する。適当に抜き出した全集を広げつつふにゃふにゃのソファーで少し寝る。スーパーで買い物をしてから帰る。