録画したテレビ番組で古代オリエント史を研究中の妻の指導のもと、10分間ほどパン生地をこねさせてもらう。とても楽しい。パンと一緒に理屈までこねて叱られたり。とても難しい。そうして焼き上がったパンの愛おしさよ。うむむむ。泥をこね、神々の姿に似せて人間と成したのはプロメテウスではなかったか。うむむむ。サトゥルヌスさながらに半ば狂気で貪り食う。うむむむ。とても美味しい。むは、むはは、むはははは。食後しばらく心と身体を休めてからジョギングに出かける。強風に砂煙が激しく舞い狂う。見上げれば黄色い空に滲む太陽。突如ポンペイの街を襲ったヴェスビオの噴火がどれほど恐ろしいものだったかと想像する。砂塵が繰り返し巻き上がる。足元を枯葉が追いかけてくる。さあ道を開けろ、罪人が通るぞ。舗装道路に立ち並ぶハナミズキが交互に身体を揺すって追い回す。冬の王の敗走だ。妄想を膨らませながら各地を巡業したのち帰途につく。近所の路地で小学生の男女が婚約を交わしている。