本気で 『電脳コイル』 を観ようと思って、『展覧会の絵』 の”プロムナード” など脳内に響かせつつ、貸しビデオ屋のアニメコーナーに入ってみたら、知らないうちにアニメ作品がとても充実していたことを知る。コミック原作だろうが、オリジナルだろうが、どれもこれも高品質が推測されるタイトルばかりで、どれもこれも片端から観てしまいたい強い衝動にかられる。とりあえず目的の 『電脳コイル』 だけは見つからず。どうなっておるのか。そのまま、ぐるりと棚を廻ると今度は特撮ヒーローのDVDが勢ぞろい。もともと勢ぞろいが大好きな特撮ヒーローたちであるが、それがまたさらに勢ぞろいである。こちらも全部観たい。ウルトラ兄弟でもライダーでももう何もかもが観たい。今までは何とも思わずに見上げ見下ろしていた雑木林が、今日に限って何故か無性に放っておけない気がする。どうなっておるのか。さらにそのまま一般映画のDVDの森に踏み込んでみれば、もう邦画だろうが洋画だろうが、一つ残らず観たいのである。一つ残らず観たいのにどこから手をつければ良いのか、どこまで目を通せば良いのか分からなくなって眩暈がしてきた。落ち着かなくなってきた。誰かどけてくれ。私の前からこの円盤の群れを、折り重なる果てしない宇宙を、DVD曼荼羅を。短すぎるのだ人生は。今すぐこっそり時間を止めて、その間に何年かかけて全部の映像を観尽くして、また時間を動かして生活に戻れたら、どんなに心が休まるだろうか。何とかならぬものか。
ビデオ屋からの帰り道、見慣れた公園に見慣れぬ男が立ち尽くしていると思ったら雪だるま。この世に生を享けて十数時間、その目に映るものといえば、己が故郷と知る銀世界の、ただ消え去り行くばかりの末世、泣き濡れつつ失意の余生を静かに過ごすの図。さようなら雪だるま。夕飯はカツオの刺身。食後にはどういう趣向か、妻の希望でカーペンターズなど聴く。それから、インターネット。『電脳コイル』 の第1話と第2話だけ観る。面白い。