ポアンカレ 『科学の価値』 を拾い読みしている。冒頭の数学的直感と論理についての煩悶や、終盤の科学の客観性に関する哲学者ル・ロアへの反論など、これほどまでに己が社会的意義を確認せずには前に進めないのが科学者という存在であったかと、SEの我が身につまされつつ悲壮感さえ漂う彼の決意に思いを馳せながら読み耽ったり。

”いまは廃れてしまった理論も、不毛であり無用であった、などと信じてはならない”
”数学者は物理学者に対して単なる公式の供給者であってはならない”
”物理学は確かにわれわれ(数学者)がさまよい迷うことを妨げてくれる”

このあたりの文章にふれる度に、ポアンカレ予想を解決したというペレルマンの表情が脳裏に浮かぶ。さらには、”これから発展を遂げて他の理論のモデル役を務めるのはあるいは気体運動論であるかも知れない” という一節もあって、本人がどう意識していたのかは分からないが、ポアンカレはそんな予想もしているのである。ペレルマンは何よりポアンカレに対して誠実だったということなのかも知れない。