平日並みに早起きして鎌倉へ出かける。北鎌倉で降りて、円覚寺建長寺。どちらも年に一度の宝物風入れのためいつになく観光客が多い。宝物には見向きもせず、建長寺あたりでは半僧坊まで登ってみたり。烏天狗は今日も健在。「まだまだいけるで」 と調子に乗ってハイキングコースをつたって鶴岡八幡宮まで抜ける道を模索してみたが、半僧坊からさらに上の見晴台まで登ったところで遥か南に眩しい海岸線を眺めつつ一息入れたら、遠回りが億劫になったのでさっさと山を降りて巨福呂坂を経て鎌倉へ。鶴岡八幡宮を参拝。七五三の子供が多数。外国人多数。舞殿では結婚式。見物客多数。ハト多数。賑やかなことこの上なし。御神籤は小吉。妻は凶。まあ、いいか。今日は県立美術館に寄ってみようと思っていたのだが、池の白鷺を眺めているうちに時間ばかりが過ぎてどうでもよくなる。若宮大路からいつものとおり八雲神社に向かう途中で空腹に堪えきれず、大衆食堂に入ってカレー南蛮を食べる。妻は天ざる。それからあらためて八雲神社にお参り。こちらはひっそりとしている。ときどき地元の人がこの鳥居の前を頭を下げて通り過ぎるくらい。それでもたまに外国人観光客が訪れるわけだが、そういう外国人は拝礼にも慣れた様子でたいがい拍手の音も落ち着いている。踏み切りを渡って由比ガ浜に向かう道では必ず喧嘩になる。道なりに歩くと材木座海岸の遥か東に流されてしまうので、どこかで右に曲がらねばならないのだが、どこで曲がるかでいつも意見が食い違うのである。適正な経路を覚えてしまおうとしないのもいけないが、気ままが良いと思っている点では意見が一致しているようだ。なんとか若宮大路に戻って海の近くのローソンで買い物などしてから海岸へ。ビニールシートを広げ、目を細めて太平洋を眺めながらビール。幸せだ。空には鳶がヒョロロと啼いている。幸せだ。犬が穴を掘っている。幸せだ。水平線に集まる群蝶には黄金の太陽が射し込んでいる。サーファーが静かに波に洗われている。靴を脱いだ妻の足先に太平洋が絡みつく。若い白人女性が一人で砂浜に腰かけて割り箸で助六など食べている。二人組みの女性がサランラップをずるずる引き出して不思議な写真を撮ったりしている。7、8人の高校生が少しずつ制服を脱ぎながら海水に踝を浸け、膝を浸け、下半身を浸け、最後には笑ってパンツ一枚で泳ぎはじめたりする。しばらく妻と二人で黄金に輝く世界を眺めて過ごし、やがて熱の冷めた高校生達が海岸に戻り、ずぶ濡れのパンツでどうやって家に帰ろうかと検討しはじめた頃に由比ガ浜を後にする。いつもなら日が暮れる前に帰途につくのだが、今日は気にせず小町通りに飛び込んで、「社頭」で和紙の栞などお土産に買ってみたり、ミカドコーヒーでモカソフトを食べたり、豆菓子を買ったり、陽が暮れてもまだ鎌倉周辺をうろうろしていた。小町通りの夜は案外早いということが分かった。