厳密にはモンゴルの馬乳酒のような例外もあるが、ほとんどのお酒は植物を原料として生まれる。だってほら炭水化物が糖が……とかいう理屈がちゃんと分かっている人にとっては、当たり前のことなのかも知れないが、自分にとっては新鮮な驚きなのである。今さらそのことを発見した気分なのだ。酒は植物から? あの、もの言わず、話しかけても人の話を聞いているのかどうかさっぱり分からず、映画を観にいこうと誘いかけてもついてくるわけでもなく、水をやらねば不貞腐れ、人になびかぬくせに風にはなびき、地面の下ではいろいろ溜め込んでおるようで油断ならず、そのくせ忘れた頃には斬新なデザインでもって微笑みかけてくる、あの植物がである。それが、我々を酩酊させ、狂喜させ、解放し、慰めてくれる、あの ”酒” の供給者であるとは!