早起きをして人間ドック。採血、採尿、視力、聴力、血圧、眼底検査、眼圧検査、肺レントゲン、超音波、心電図、通勤電車での立ち位置、暗記している電話番号の数、最近買ったCD、そして、胃レントゲン。例によってバリウムを飲む。今日飲んだバリウムは美味しかった。どうやら店長が変わったらしい。超音波の検査では「吸って〜」「ちょっと吐いて〜」「はいとめて」「とめてま〜す」「はい楽にして」「大きく吸って〜」「吐いて〜」「とめま〜す」「吸って〜」……というのが、他人にわき腹をくすぐられながらずっと続くのである。拷問。胃のレントゲンも同様で、「飲んじゃって」「しばらく我慢して」「はい背中を向けま〜す」「回って〜」「回って〜」「はい上向き」「ちょっと左向いて」「止めます」「止めてて」「こんどは右に回ります」「回って〜」「回って〜」「止まって」……これが、宇宙飛行士の訓練みたいに回転する台の上でしばらく続く。これだから健康診断はやめられない。
午前中で終わったので、午後から出社。血を抜かれたせいか、夕方まで呆けている。定時後は職場の飲み会。下剤が早めに効いていたおかげでバリウムはたいがい体内には無くなっていたが、アルコールにはバリウムを固める作用があるとかで、指先を震わせながらタンブラーに1杯のビールで乾杯だけ相伴し、そのあとは専らウーロン茶。しらふでも楽しめるあたり、自分も大人になったものだと他人事のように感心しつつ、寿命が400年あったらどんな風に過ごすかという話題に夢中になる。