「ああ、バインダーに閉じればいいんだー」とか、「たったいま所沢にきたところざわ」とか、近頃オヤジギャグばかりが口をついて出てくる。しかもそれを、皆が聞き流してくれる。これはもう達人の域に達している。オヤジギャグの達人。達人28号。免許皆伝。

どうやら今年はまともに読んだ書籍は50冊に満たないことがほぼ確定した。10冊以上ある読みかけを合わせても60冊程度である。世の中には年間100冊以上読む人がいるようだが、どうすればそれだけ読めるようになるのか。新聞や雑誌を読むのをやめよということか。コミックをやめよということか。音楽鑑賞も映画鑑賞もやめよということか。美術館も、能楽堂も、囲碁(みたいなもの)も食事も睡眠もやめよということか。植木鉢をぼーと眺めるのもだめか。うーむ。

今年読んだ中で、特に面白かった本は 『ルネッサンスの光と闇』(高階秀爾) である。次点は 『花鳥風月の科学』(松岡正剛)としておく。どちらも中公文庫で、中央公論社を褒めておく。もちろん、その他にも 『ローマ人の物語』(塩野七生)は相変わらずエキサイティングだし、プラトンの対話編や 『枕草子』 などの古典もあらためて読んでみて得るものが大きかった。

逆に、読みかけで挫折したのは 『肉食の思想』 という新書。そういえばこれも中央公論か。食生活からヨーロッパ史を読み解くという、非常に興味深いテーマなので、しばらく巷の書店を探し回ったのがなかなか見つからず、たまたまどこかで発見したときはそれはもう喜々としたものだったが、読み始めてみると約40年前の論文であるためか21世紀の現代ではやや共感しにくいところがあり、第Ⅰ章まで読んだところで中断している。ああでも、こうして思い出しているうちに、また読み直してみようかという気になってきた。本は変わらなくても、自分のほうは変わっているのである。