一年間でも滅多にないような豪雨になると、昨晩から天気予報が騒いでいたので、それなりに覚悟を決めて家を出た。まだ大して降っていないが、これからこれが滝のようになるのだなと、想像しながら、そろそろ新しい水着が欲しいな、などと考え事などしつつ出社。遅刻もしなかった。

坦々と仕事をやり過ごしているうちに、大雨の事などすっかり忘れていた。21時に退社して、ビルの外に出てみたら強めの風が吹いているので、大雨警報のことを思い出した。雨は確かに降っていたが、もはやずいぶんと小降りになっていた。

歩き始めてみると街のいたるところに傘が死んでいる。そのほとんどがビニール傘である。骨が不思議な方向に折れ曲がり、開くことも、閉じることもままならず、濡れた枯葉の貼り付いた路上に、横断歩道の真ん中に、街路樹の根元に、郵便ポストや駅のゴミ箱の上に、凄惨な姿でうずくまっている。いったいどんな魔物がここを通り過ぎたのか。

仮面ライダーでいえば戦闘員、ガンダムでいえばジム、節分でいえば撒かれた炒り豆、みんなよく頑張ったが、半ばこうなることが予期されていたものたち。横たわるビニール傘の一本一本に念仏を唱えながら帰ってくる。帰宅するまでに三十本は数えたか。乏しい国力である。