ぼちぼち起き出して出かける。
鎌倉駅についたのはちょうど正午だった。鶴岡八幡宮へ初詣に来たつもりだったが、
三の鳥居辺りまで来てみればもの凄い人だかりである。遠目に舞殿の屋根やら大銀杏やらが
見えているのだが、そこまで人類の頭で埋め尽くされている。

妻もオレさまも満員電車はこりごりである。

妻はがっかりしている。腰越で足止めをくらった九郎判官の姿もかくやとばかりである。
仕方なく妻の手を引いて踵を返し、若宮大路を海のほうへ歩きつつ、途中の蕎麦屋に入って昼食。
妻はぶつぶつ言いながら親子丼を、オレさまはネギの入ったカレーそばを食べたのち、
再び鮭の稚魚のように海を目指す。いつの間にか陽射しが暖かくなってきたのでマフラーをはずす。
マフラーをはずしながらふと昨年7月に訪れた八雲神社のことを思い出した。

鎌倉最古の厄除開運の社である。あのときは小さな神様に出会ったが、また会えるだろうか。
大急ぎで訪ねていってみると、参拝者の数もそこそこで、それなりに賑やかである。
周囲を眺めてみたが、あの愛らしい神様は今日はいないようだった。

驚いたことに正月三日までは昇殿が許されていた。さっそく靴を脱いでお参りをする。
かぶりつきで初詣を済ませたのち、お神酒まで振舞われてしまった。しかも御神籤を引けば、
これが 『吉』 である。大サービスじゃんか。せっかくなので御祓いもしてもらった。

すっかり気分が晴れたので、そのまま由比ガ浜まで歩いていった。
また沢山の人がサーフィンをやっている。水平線の向こうに、見慣れない島影が大きく浮かぶの
を訝しげに眺めながら、いつものように、また二人で砂浜にしゃがみ込んで、ビールで乾杯する。
もの凄く風が冷たかったが、ときどき兆す太陽の光が無上に暖かかった。
 
 うち寄せる波の裳裾に口づけて犬は清かに尾を振りにけり
                              TomFooL