早起きをして、今日から開催されている 『プーシキン美術館展』 を覗きに、
上野の東京都美術館へ出かける。幸運なことに、我が家は朝日新聞をとっているので、
3ヶ月の購読契約延長と引き換えに招待券2枚を入手することにすでに成功していた。
(注:朝日新聞社が展覧会の共催者なのである)

10時過ぎに入場して、観終わるまでに3時間くらい要したのだけれども、
そのうちの30分は 『ヴァイルマティ・ティ・オア』 とかいうゴーギャンの絵の前に
立って過ごした。たまらんのう。この色彩が、この画面右下のね、マンゴーだかパパイヤ
だかのこの赤と緑と紫がもうね、たまらんのよ。持って帰りたい。

どうでもよいけれど、この作品はいかにもコトが終わった後のような場面で、
ヴァイルマティは火のついたタバコなんか持っていて、そして目が笑っている。
いかにも見下したような表情を浮かべながら、後ろに立つ青年を視界の端で流し見ている。
プリミティヴな素材でも遥かに都会的なモチーフだ。

ちなみにすぐ隣にゴッホの絵もあって、例の刑務所で囚人が輪になって歩いているやつ。
寒色系の画面が鮮やかでオレさまも昔から好きな1枚だが、本物を近くで見ると、
本当にゴッホという画家の神経の細やかさというか几帳面さのようなものがビシビシと
伝わってくる。画面に規則正しく織り込まれた独特の細長いタッチが、まるで鎌倉時代
鎧の縅みたいだ。

もちろんルノアールの作品なども、特に暗い色の部分などは印刷物では分かりにくいもので、
あの紫に混じった微妙な緑や黄色が、いかに画面に輝いているかということは実物でないと……
まあ、いいか。展示作品には、この他にもセザンヌもモネもあるのだから、ずいぶんと
贅沢な美術展なのだが、展覧会の目玉は、マチスの 『金魚』 なのだそうだ。

オレさまはどうもマチスは苦手だ。今日も 『金魚』 の前で 「オレにも描けそうやで」
と関西弁で思ってしまった。なんだかなあ。どうしてこういうのが良いのかね。
まるで野獣の檻に入れられたような気分になる。ヴラマンクは少し見直したけれどな。

そういうわけで、何も成長しないまま退場。
売店で絵葉書を3枚購入。妻はマチスの絵葉書を1枚だけ購入した。展覧会には
出展されていなかった、女性の肖像を描いた作品である。オレさまもこの絵を見た
ときには、マチスも悪くないと思った。

午後は買い物などして過ごしつつ、夕方には帰宅していた。
JRAのホームページで確認したところ、キャプテンベガはどうやら3着だったらしい。
もはや言い訳もできない。未勝利戦という広大な地平を、淋しく彷徨い続けるだけだ。