帰宅後、いつものようにスポーツクラブへ行く。
今夜もナイト会員のヌシの人はいた。この人はオレさまよりも早くジムに入り、
オレさまよりも何倍ものスピードで何時間も長くランニングマシンを蹴り、
さらにオレさまの何十倍ものウェイトを重ねて何百回も上げ下げしたかと思うと、
またランニングマシンに飛び乗って何千キロも走りこむのである。
凄まじい集中力だ。酔っ払いのモグラ叩きでもこれほどまでにはいかない。

オレさまが運動を終えて風呂場へ向かう頃になっても、まだ彼は自分と闘っていた。
いつものシナリオのとおりである。その後オレさまはジャグジーで、海底怪獣が
眠りから覚めて地上に現れる真似をして遊びながら、いったいあの人は何時まで
ああしているつもりなのかしらと、考えてみたり、考えるのをやめたりした。

やがて風呂からあがって、鉄腕アトムのことなど考えながら濡れた髪を乾かして
いたら、ヌシの人が更衣室に戻ってくるのを発見した。閉館30分前である。
なるほどこのくらいまで頑張っているのか、と関心しながら、着替えの合間に、
チラ、チラ、とウェアを脱ぐ彼の様子を伺っていたら、
そのまま水着に着替えて、またプールの方へ足早に去っていった。