夫婦で、上野〜根津〜千駄木谷中銀座〜日暮里と散歩する。

不忍の池に浮かんでいる無数の足漕ぎボートを指差しながら、

「おまるがたくさん!」

などと喜んでいる妻を連れて歩くのだからしんどい。

特筆すべきは根津神社である。
オレさまは、かつてこれほどまでに美しい神社を見たことがない。
……なんてことを言うと、ほかの神社に対して失礼なので、罰の当たらぬよう、
心の中で謝っておくことにするが、とにかく美しい神社なのである。

表参道から、楼門、唐門、社殿に至るまでの石畳は美しく掃き清められ、
手水の泉も透明で清清しく、透塀の深みのある赤と黒は参拝者の胸に安心を
もたらしてくれる。そうして見上げる社殿の美しさよ。そうして引いてみた
おみくじの有難さよ。ああ、なぜいままで知らずにいたのか。

オレたちが参拝したとき、ちょうど結婚式が行われるところだった。
新婦の白い綿帽子が回廊を渡って社殿に吸い込まれていく。
参拝者たちはしばらくその様子に見惚れていた。おめでとうございます。

根津の交差点あたりで、有名な(?)たい焼きを買って、
左側に文京区、右側に台東区を眺めながら、ヘビのようにうねる道を
たい焼きを頬張りながら歩く。

「文京区と台東区だったらどっちがいい?」

などと微妙な質問を妻が投げてくるので、ドキドキしながら、
どちらも素晴らしいじゃないか、などとお茶を濁す。本当に危険なヤツだ。

谷中銀座の入り口で酒屋の店主に捕まってしまい、仕方なく椅子に腰掛けて
エビスビールを飲ませてもらう。各店舗の美しい看板など見上げながら酔う。
ここの商店街の活気には関心させられる。

岡倉天心の旧居跡地をちょっとだけ覗いて、夕焼けだんだんを上り、
日暮里駅まで歩く。お彼岸ということで人出が多かった。